本日は夏茶の最終日。

品種は台茶17号白鷺、今月の完全帰国を考えているので製茶を現場で学ぶのは今日で最後になると思う。

夏の刈取り

夏茶の最終日、いつも通りに畑へ向かう、品種は台茶17号白鷺


これ以降も日本と台湾を行き来することになり、その都度現場へ入って勉強できたらとは思っているが、一応区切りの日になることは間違いない。

こんな時は5年前から行き来し、そして約1年半近く住み込んで感慨深い文章を期待する方もいるかもしれないが…

冷めた人間だと思われるかもしれないが自分の中で淋しくなるような気持ちは一切ない、日本と台湾の距離の近さもあるのかもしれない。。
でも、自分の中ではやっと…やっとスタート出来る地点まで来れたという気持ちの方が強い。

茶の勉強はここで終わりではなく、これからもまだまだ続くし、これからの方が長い。
単に一つの通過点でしかないし、そうでなければいけないという思いの方が強い為にそう思うのかもしれない。

そしてやり遂げたとか頑張ったという気持ちよりやり残したものが自分の中ではまだまだ多い、だいたい何も成し遂げてませんし。。。
色々な事にもっと早く気付けた筈だし、そうなっていれば現時点よりもっと深いところまで行っている筈だという思いの方が強い。
しかし、後悔しても過去には戻れないし、答えは常に前にしかないと思っているのでそれでも進まなければいけないだろう。

夏の台茶17号

多くの事を学んだ畑

台茶17号白鷺殺青前

節間も短く良い生葉です

幸いにも1年以上住み込んで畑の作業から製茶まで関われた事で見えたものは多い。
多様な品種、手摘み~ハサミ、平地に近い場所、有名茶区でない為に年中単一の烏龍を作り続けることはなく、季節や市場を見て生葉を生かしていく一流の農家に来れたことは本当に運がよかった。

台湾の緑茶、烏龍、紅茶、そして東方美人まで。
これだけ幅広いものを見られるのは平地に近く技術を持つ農家だからだろう。
おまけに土まで触れ、茶を考える上での基礎的な事は学べたと思う、わからない事も経験と理論を通して推測できるようになった。

今後はわからない部分を都度台湾に持ち込んで解決するようになるだろう。

と、まぁ…前置きが長くなりましたが…
前述したように特に感慨にふけることもないので普段通りに殺青作業をこなしていった。

最終殺青

最終殺青開始です

殺青中の釜の中

微調整をかけつつ殺青中

2台ある殺青機のガス圧が不安定で、しかも両方の大きさが違う為に釜の温度も回転の速さも違う、降ろす時間も差がある。。
毎度ながら微調整をいれ苦戦しながらこなしていき、そこそこうまくいった。

が…
最後の殺青で投入量の問題で少しミスってしまいました…。

相方から
「売る為の知識はもう充分だけど製茶はまだ先があるよ(笑)」と一言。。

台湾人というのは情が深くそして大袈裟な人が多い為、もし僕が他の農家に住み込んでいたらそこの方は日本人に対して僕を紹介する時に
「彼はもう大丈夫だ!完璧だよ!!」
と、足りない部分を目をつぶって他人に見栄えが良いように言ってくれたりするだろう。
そこには自分の商売も絡んでくるから尚更のことだろう。

でも、僕のいる農家はそのような事がない。
「何十年やっても毎日発見があるんだから5年じゃまだまだ!」
と普通に言ってくる。

日本でどうこうではなく、本場のしかも高いレベルでちゃんと対応してそれを求めてくれるのが自分にとっては嬉しい。
まして褒められて伸びる子ではないので…(笑)
冗談はさておいて、自分は現実主義なので足りない部分がわかっているのにそんな言葉を実際にかけられるのはあまり好きな方ではない。。

殺青中

熱い釜の中に手を入れ葉を確認していくので、作業中はこんな感じです


小さな農家で常に小ロットの生産、一つ一つが家族の生活を支える大事な製茶だ、「普通のお茶」では善しとされないし生きていけない。
その製茶工程で大事な殺青を日本人の僕がやっている事でレベルが落ちたらそれは農家の死活問題だ。
だから、おのずと高いレベル、そして満足しないで上を目指していく事を求められるのは当然だろう、客としてや体験で来てる訳ではないのだから。
このプライドと向上心、真摯に茶と向き合う態度が有名茶区や標高だけで高値のつく高山でなくても、多くの方から認められる要因だと思う。

台湾ビール

殺青が終わりシャワーを浴びた後一人台湾ビールで「お疲れ様」と。。


本当にここで勉強が出来てよかった。
殺青が終わりシャワーを浴びて一人で乾杯♪安い台湾ビールも今日は旨く感じる。。

【一緒に読みたい関連記事】