6月も半ばを過ぎて東方美人の時期も終わりに近づいている。

他の地域では7月の夏茶まで東方美人を作ったりするものだが、良品呼ばれるものはその時期には生まれない。

そして、茶樹へのストレスを考えればこの一季節で終わらせるのが農民として正しい判断だろう。

東方美人品評会

品評会に出せば良い評価をもらえるロット

今年の東方美人はおおむね良好だった。
ウンカの発生も多く、摘み手も問題もクリアーできた部分があるので品質は相当良い。

しかし、製茶日の天候になかなか恵まれなかったのも確かだ。
これは仕方がない、今年は摘み手を管理する方と協力して進めていったので、摘み取る日をあらかじめ決めておかないといけなかったのが原因だが、我儘ばかりも言っていられない。

よく中国茶や台湾茶の世界で「天地人」と言われるが、これはそうそう揃うものではない。
僕が去年から農家に住み込みをはじめ、1年ほぼ全ての製茶に携わっているが、完璧に近い状況で製茶できたのは本当に1~2日だろう。

天地人と皆簡単に言い、そのような広告を打たれたロットが市場でゴロゴロしているが、農民の立場から言わせてもらえば、そんなにある筈はない。

東方美人の水色

東方美人、理解してくると色々と考えるべきものが増えてきます


今年はブログにて品評会などのことにも少し触れた。
最近の品評会は形状を重視するあまり、茶樹へのストレスが相当にかかっている。

今の採点基準が続くようなら茶樹は年々衰え、台切りや中切りの感覚も短くなり、農家は苦しい方向へ進んでいくと思われる。
実際、うちの畑でも、僕が初めて来た5年程前に比べ、弱っているなと思う品種が見受けられる。

うちの農家では、品評会の審査をする方などとも顔見知りなので、この現状については常々伝え、審査の基準を改めた方が良いと伝えているのだが…恐らく変わらないでしょう。

そんなこともあってだろうか…
うちでは今年品評会へ出すロットは普段の年より少なくなる見込みだ。
基本的に、東方美人に向く青心大有はほぼ全てを出すのだがそれ以外は既に売りさばいている。

品評会へは地元の農会の顔や付き合いもあるので出品はするが、品評会だけを狙い、小さい芽を根こそぎつめば茶樹への負担が今まで以上に進む。
もう既に茶樹へのストレスは限界値に近いところまで来ている。。

東方美人を作る茶農家というのは、「東方美人農家」ではなく、あくまで「茶農家」だ。
一季節茶に拘りすぎて、他の季節の烏龍に影響が出れば元も子もない。
お客様に届け伝えるべきものは東方美人だけでなく、東方美人を含めたお茶であるべきである。

自分達の畑を守り、お客さんの信用に応えていく為に畑と品評会どちらをとるかと言われれば畑でしょう。
品評会で特等奨(1位)をとれば注目され、お金も入り、その宣伝効果も期待できる。
でも、相方や大先生いわく
地道に良いものを作り信用を重ねていけばリピーターは離れずに農家としてはそれで充分やっていける!と常々言っている。

全くその通りでしょう、大先生からは
品評会で良い結果を得る為に茶を作っているのではなく、人民の為に作っている、僕は奨はいらない!
という言葉をことあるごとに聞いている。

今年の判断は農家として正しく、そして農家としてあるべき本来の姿でしょう。

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