ブログではリアルに伝えなかったが秋茶に入ってすぐに紅茶品種の烏龍茶を作る機会があった。

うちの農家には紅茶品種は植えていないのは詳しい方なら知っていると思いますが、これは頼まれて製茶したもの。

昔、茶農家をしていた知り合いの方がもう農家はやめたのだが、畑の一部だけを残していて、生葉を持ってお願いに来られ、大先生が快く引き受けたもの。

おばちゃん

茶葉を持ち込んできたオバサン

痛み葉

若干痛んでしまったものも…

恐らくオバサンが朝から一人で手摘みをした為、量的には少しだった。
品種は台茶8号、紅茶適性品種で僕はこの時に初めて見た。

しかし、引き受けたものの大先生の顔は浮かばない…
理由を聞いてみると、この品種は紅茶でないと美味しくならないのに持ってきたオバサンが烏龍茶にしてくれと言っているという…
持ち込んだオバサンは紅茶が好きではないらしく、どうしても烏龍がよいと…。
では何故昔茶農家をしていた時にこの品種を植えたかというと…自分が飲む為でなく、生活、商売の為であろう、なんとなく違和感を覚えてしまうのだが緑茶、烏龍、紅茶と幅広く作る台湾においてはこのような方もいるのかもしれない。

そんな個人の理由もあるのだが、大先生曰く、これは烏龍にしても香りも味も出ないという…
僕には「?」な部分が多かったのだが、作業をし、試飲をしてその理由がよくわかった。

この日は同時に自分達で刈り取ったお茶も製茶していたのだが、烏龍品種の場合、萎凋~撹拌を繰り返していくとそれにともなった香りが出てくるのに対し、この台茶8号はそれが全くなかった。
一つの工程が終わるごとに大先生が僕を呼び
「同じように作業しても烏龍と紅茶の品種は違うだろ?しっかり比べてみなさい、言っている意味がわかるだろ!?」と…。

台茶8号の撹拌

同じように撹拌しても烏龍品種とは違う反応が茶葉から返ってくる…


二つのものを同時に進行していたのでこの違いは凄くわかりやすかった、そして僕の中で一つ思い出した事があった。
夏に一時帰国し、静岡の山間地の茶農家さんの品種違いの生葉をもらい家で試験的に作ってみたのだが、同じように烏龍の香りが出ないものがあった。

その理由がずっとわからなかったのだが…この製茶をしたおかげで疑問がとけた。

不思議な事に、向く向かない、美味い不味いはあるにせよ、烏龍品種というものは紅茶にしても、紅茶になるものである。
しかし、紅茶品種で烏龍を作ると一応形として、工程として烏龍とは言えるのだが烏龍の香味が出ない。。

台湾では多くの品種が世に出ているが、烏龍品種として出たもので紅茶を作る事はよくある。
しかし、紅茶品種として出たもので烏龍を作る人は今までみたことがない。

やはり、そういうことなのだろう…。

製茶が終わり、乾燥が終わり…その後も勉強は続く。
大先生と自分達の畑でとった烏龍品種のものと頼まれた紅茶品種で作った烏龍を比べる。

やはり、先生の説明通りだった、そして面白い事に紅茶品種で作った烏龍の水色にはある特徴がある。

台茶8号の水色

向かって左は烏龍品種の烏龍、右が台茶8号紅茶品種の烏龍


今回、このような経験が出来て良かったのだが、同時に本当に気が遠くなってしまった。
自分が日本で日本茶の品種で実験的に作った時も今回の紅茶品種と全く同じような製茶工程の印象がある、その時は二種を作ったのだがもう一方ではちゃんと出ていた。。

葉の形状やその他の要素などで烏龍の工程に耐えられるかどうかという点があるのだが、それ以外にもこのように元々向かない品種もある。
そして出来るものでも作る場所(標高など)によっても特徴が違う、季節も品種によって一番向く季節がある。。

日本では烏龍や紅茶作りを始めている方が増えてきているが、このへんの問題を正確にクリアーしていかないと…恐らく良いものは出来ない。
この判別にはかなり長い時間を要すると思うし、そういう事を考えると、本当に日本での烏龍や紅茶作りというのは気が遠くなる作業だといわざるをえない。。

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