あいにくの雨だった為、本日は家で春茶の枝取りとティーパック用の茶葉の準備作業。

実は今年の春茶の殆どがティーパックになる…。

春茶を?嘘でしょ?と言いたくなる人も多いとは思う、天気に振り回された日はあったが、出来は悪くなかったし実際に全体的に良好だった。

ティーパック

烏龍茶として完成させたものを砕いてティーパックに!贅沢ですね♪

ブログを日々読んで頂いている方には僕の滞在している農家がどのくらいのレベルで、どんな考えをもち茶というものに向き合っているかはわかって頂いていると思う。

実際他の農家に比べ技術も理解度、姿勢も完全に突き抜けており、今回の春茶も市場に出ればおおむね良い評価をもらえるレベルのものだと思っている。
実際にうちのお茶で市販において多半数をしめる撹拌で失敗した茶を飲んだ覚えは一度もない。

話の続きですが、どこの農家もだいたい契約先というものがあり、年や季節単位で量を決め、それを収める義務がある。
うちの場合ティーパック用の茶葉がそれにあたる。

実は去年、散々ブログで書いてきたが台湾は異常気象でそれが産量に大きく響きました。
うちは有機循環農法という、自然のサイクルを体現する農法をとっている、これは東方美人をメインとして考えて突き詰めていった結果である。

茶畑の水

スプリンクラーはなく、茶樹は雨か土中の水を自力で確保して育ちます。うちの常識は他農家の非常識です…

台湾の多くの産地、特に量生産型の地域では畑にスプリンクラーは必須である、必須というよりもそれが常識で見かけない方が不思議なくらいだ。
しかし、うちはつけていない。
肥料を大量に撒き、水を定期的にあたえるのは作物を安定的に作る方向から見たら当然であるし、否定する部分は何一つないし、むしろ当然だろう。

うちはそれに対し、土の栄養は雑草と奪い合い、水は自力で根を伸ばし茶樹自ら自ら確保することを求め、茶樹自体に強さを求める。
このへんからも畑への考え方が全く違う。

去年は刈り取り後雨が欲しい時に振らず、刈り取り時になると雨が続くといった悪循環が続いた。
うちの畑では、前述したようにそのような時にでも茶樹が自ら対応できるように、畑の有効土層についても深く考えられた作りをしている。

有機循環農法をしているからというのもあるが、スプリンクラーをつけないのは将来的に水が貴重なものになるだろうという考えを先生が持っているものと思う。

台湾は小さな国で雨が降ってもすぐに海まで流れてしまう。
昔から農業の水には困っておりいたるところに溜池が今でも残っている。
そしてその貴重な水は現在工業用に使われることが多くなり、農民はますます苦しい立場に追い込まれている。

世界的に見ても水は深刻な問題である事はニュースなどでも度々聞くし、将来的に水が原因で戦争が起こる可能性があるという記事も見た覚えがある。
そういったこともあって、うちでは畑の横で水を張らず畑で生長する稲を実験的に植えていたりする。
10年、20年以上先に起こるかもしれないことを既に考えて、それが茶畑でも実践されている。

稲

将来を見越して茶畑の横で実験的に植えている稲

台湾では茶樹は20~30年で植え替えをしているところが多いように思う、産量を求められる地域ではもっと早いのかもしれない、というより…もたないと思う。
それに対してうちは茶樹は畑の管理を怠らず強く育てれば50年100年でも良いものができるという考えが根本にある。
その考えをもとにしても、将来的に水などの問題が起きても何ら影響がない作りになっているのは確かである。

実際去年は茶樹が自力を見せ、厳しい環境の中で頑張ってくれた。
周りにもスプリンクラーをつけていない畑があり、ボロボロだったのに対してうちは茶樹自体が強く育つようにしているので少しは救われた。

茶樹の強さ

茶樹自体に強さを求め、その為のサポートをしていくのがうちの畑管理

しかし、それでも年間の産量は半分以下になった。
10のものが5になったと言えばそんなに実感はないが例えば6000~7000キロの農作物が半分以下になったと聞けばそれがどれだけ大変なものか伝わると思う。

ティーパックの納期はもうすぐなのだが本来なら去年のストックなどで間に合うのが普通だ。
しかし、上に書いたような理由で足りない為、やむを得ず春茶を切り崩さざるをえなくなった。

有機系の農家はここ最近の健康志向のおかげで、簡単に「素敵」だとか「素晴らしい」「安全」などと言われ、華やかに取り扱われるが、うちのような極端な作りの農家の場合、自然の影響をまともに受ける為今回のような事は起こり得るのです。

このような記事は書かかない方が世の中の方に夢を持たせ続けられると思いますが、本当に極め、突き詰めていった場合はそこにはリスクが絡んでくること。
そしてリスクを承知でその道を選んでいるのだから、結果に対しては何があっても受け止めていかないといけないということを知って欲しかったのであえて書かせてもらいました。

※追記

facebookでのつながりや、以前お買い上げ頂いた方などから春茶に関してのお問合せを幾つか頂いておりました。

当初は春茶全てがティーパックでなくなるのではと予測していたのと、その他個人的な考えからも取扱いはしない予定でしたが、企画的な感じで少量の販売をしようかと考えております。

色々な方と知り合いになり、反応なども頂いた中で日本での台湾茶の現状について気づいた点が幾つかありました。
その現状をふまえ自分らしく茶を提案したい思い、今農家の方にも協力をお願いしています。

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