一つ前の東方美人と製法美人にて東方美人の難しさは伝えました。

今回はその結果も踏まえて東方美人農家にいる僕が思うことについて書いていきます。

東方美人の真実

先祖代々受け継がれる知識・製茶方法、特殊な畑の管理…全て含めて東方美人です

まず昨今の流れとして台湾において新興茶区での東方美人作りが盛んになっています。
しかし、新興茶区においてどうして東方美人が作られるようになったのかその背景への理解が必要です。

そこには元々メインをする茶がある訳で、畑の管理はそのメインとなるお茶を中心とした作りになります。
新興茶区において作られる東方美人は、その土地のメインの次にくるものです。

では、僕が滞在する農家はというと…
一年のサイクル、畑の管理が東方美人を中心にまわっていきます。

ここには畑の管理方法において大きな差があります。
新興茶区のウンカが出るから作るというものではなく、東方美人を作る為にどんな畑にするのか…この違いですね。

台湾に住み始めもうすぐ1年ですが、見て推測する限り、ウンカという害虫は高山地区を除いて多かれ少なかれ台湾のほぼ全域で発生しているものだと思います。
ですから、その害に起因した茶がどこから出てきてもおかしくはないと思っています。

しかし、昨日のブログで伝えた通り、ウンカの大量発生した畑では葉が成長できなくなる程の害がでます。
この大きな害が出る地域というのは台湾でも限られ、伝統的に東方美人を作る地域のみでしょう。

東方美人は昔から高値で取引される茶です。
台湾において最近では高山茶が高値でとりひきされていますが、その歴史はかなり浅いものです。
お金を生むお茶は商売人なら尚更作りたがるでしょう、その結果高山茶は海外に茶園を求めました。

しかし、東方美人は歴史も長く昔からの高級茶であったのにもかかわらず、海外や他の地域では殆どつくられず最近新興茶区がなんとかしようと動きだしました…

高山茶は他の地域でも作られ、東方美人は作られない…何故でしょうか?

作りたくても、出来ないからというのが一番筋の通った答えでしょう。
蜜香烏龍茶と呼ばれる、ウンカの害が少しでてるものなら多くの地域で作れるでしょう。

ウンカの害は勿論、先祖代々続く茶への考えや知識、有機循環農法を極めた畑の管理。
全ての面において他の地域ですぐに出来るようなものではありません。
これは歴史がその事を一番よく証明しているでしょう。
東方美人という茶は味・香り云々ではなく、畑の管理そのもの自体も求められるものです。

そしてその特殊性、需要に対して量の少ないものですし、畑の管理の人件費も通常の農家と比べればかなりかかるものです。
コピーも難しく、狭い台湾においても極一部の地域でしか作られない一季節茶です。

このような背景からわかるようにかなり特殊なお茶であり、故に他との競争で見るお茶ではないものです。

高山茶も東方美人も日本人から見ると同じ「高い」イメージに入ると思いますが、根本が全く違うものです。
元来、東方美人は商売人のマネーゲームになりえない烏龍茶です。
でも、産量が少なく値段も高い。だから…新興茶区ではどうしても作りたがり、現状のような状況になっているわけです。

このような背景はやはり多くの方に知って頂きたい。
そして、東方美人をメインに考え、それを中心に畑の管理をする農家に住んでいる自分としてはちゃんとした考えを日本の方に伝えていかなければいけないのではないだろうか?
という思いが、日に日に大きくなっていきます…。

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